贈与による所有権移転登記をする際に注意すること
「相続は大変だから生前に不動産の名義を変更したい」
このようなご相談をされることがよくあります。
しかし、贈与により所有権移転登記を行う場合、注意しなけばならないことがあります。
この記事では、贈与による所有権移転登記のメリット・デメリットをご説明します。
贈与による所有権移転を行うメリット
贈与は、だれに対してもすることができる
相続により名義を変更する場合は、相続人にしか名義を変更することができません。
例えば、父が亡くなり、息子である長男が健在である場合は、遺言などがない限り、長男を飛ばして孫(長男の子)へ名義変更することはできません。
しかし、贈与により名義変更をする場合は、贈与の相手方は相続人に限られません。
したがって、贈与による所有権移転登記を行う場合は、長男が健在であったとしても、孫に対して贈与を行うことができます。
好きなタイミングで贈与ができる
相続による所有権移転の場合は、相続が発生するまでは行うことができません。
贈与による所有権移転は、相続と異なり、贈与者が判断能力ある限り、いつでもすることができます。
贈与による所有権移転を行うデメリット
贈与税がかかる
贈与による所有権移転登記を行うと、贈与税が課税されることがあります。
相続税がかからないような方であっても、贈与税はかかる場合がありますので、税負担が大きくなる場合があります。
不動産取得税がかかる
相続により所有権移転を行った場合は、不動産取得税は課税されませんが、贈与により所有権移転を行った場合は不動産取得税が課税されます。
登記をする際の登録免許税が相続よりも高い
相続による所有権移転登記を行う場合、登録免許税は不動産の評価額の0.4%です。
一方、贈与による所有権移転登記を行う場合の登録免許税は、不動産の評価額の2%であり、相続の場合の5倍の登録免許税が必要です。
不動産がたくさんある場合は、すべて贈与しない限り相続登記が必要になる
不動産がたくさんあり、一部の不動産だけを贈与した場合、結局残っている不動産の相続登記をする必要があります。
しかし、不動産を大量に贈与すると、不動産の価額が低くない限り、贈与税・不動産取得税・登録免許税などの税負担が大きくなってしまいます。
贈与による所有権移転を行うべきケースは
私が思う贈与を行った方がよいケースは下記のとおりです。
子供が親の土地に家を建てる等の場合
子供が親の土地に家を建てるような場合で、土地の名義を子供にしておきたいなどの必要性がある場合は、贈与による名義変更を行ってもよいように思います。
もっとも、相続による場合に比べ、税負担が大きくなってしまいますので、できる限り負担を小さくできないか検討をする必要はあります。
なお、税負担が大きく、贈与による名義変更をすることが現実的でない場合は、贈与をあきらめ相続が発生した際に名義変更をするしかなくなりますが、遺言書の作成などをすることで確実に名義を変更できるようにしておくことが大切です。
不動産の数が少ない場合
不動産が自宅の土地、建物しかない場合であれば、当該土地、建物のみを贈与してしまえば、将来の相続登記をする必要がなくなります。
この場合でも、相続による場合に比べ、税負担が大きくなってしまうことには変わりありませんので、できる限り負担小さくできないか検討する必要はあります。
税負担が許容の範囲内であれば、贈与による所有権移転登記をおこなってもよいといえます。
相続人以外へ所有権移転したい場合
相続では相続人以外に所有権移転をすることはできませんので、相続人以外に名義を変更するには贈与を行う必要があります。
もっとも、税負担が大きく、許容範囲を超える場合は、遺言書による遺贈をすることも考えられます。
まとめ
贈与による所有権移転登記は、相続による場合に比べ、税負担が大きくなることが多々あります。
安易に手続きしてしまってからこんなはずではなかったとならないように、よく検討することが大切です。
まるやま事務所では、贈与による所有権移転登記をご相談された受けた後、結果として贈与をしないことになったり、場合によっては遺言書の作成すると考えが変わったりすることがよくあります。
自分一人ではなかなか判断がつかないこともあると思いますので、気になる方はお気軽にご相談下さい。